小説を読む

前回の日記に書いたように、私は学術論文や専門書に惹かれるに連れて、小説が読めなくなった。このごろ学術論文を書いているのだが、どうにも書けない。これはもしかすると対偶的(??)に、小説が読めるのではないかと思ったのだ。
 
結果的には読めた。読んだ本は阿部和重の「ミステリアスセッティング」である。BOOKOFFの108円コーナーで、昔阿部和重の本を全巻買うだけ買って読まずに売った記憶から、手にとって結局読まずに忘れていた。阿部和重氏の本は、文庫本に限る。というのも解説者が豪華なのだ。同書では、芥川賞作家の金原ひとみであった。金原氏は村上龍の文庫本の解説で見かけて以来、久々であって、氏曰く「これなくしては生きていけない」レベルの中毒性があるという。私もかつて全巻を買い漁った頃はそのような感性があった。

実のところ、今となってはそのレベルの没入感を持っていない。しかしながら、ふと久々に昔の彼女の名前をGoogleなどで3時間も検索するなど、氏の作品中人物によくでてくる「自己愛ネットストーカーキモヲタク」ぶりを再発した。今になって、数年ぶりの自らに内在する阿部和重ワールドとの接点を懐かしく思う。