村上春樹「ねむり」書評

半年ぶりに延滞した本を返しに(一冊だけどうしても見つからなかった「量子力学と私」がたまたまでてきた)、近所の図書館にいった。この図書館は品揃えはよくないが、なかなか絶妙なセンスで本の特集みたいな棚を組んでいる。今回は眠りというテーマで本を並べてくれていた。本を返すだけのつもりだったけれど、久々に村上春樹が読みたいし、その本は短編で挿絵付きで百ページにも満たなかった。かなり当たりだったので書評。

主人公は倦怠期の妻で、夫や家族に違和感を感じながらも、不眠症になることで現実と乖離して暮らしている。案の定、レミーマルタンのような酒だとか小説だとかお得意のハイブランド志向みたいなのがでてくるけど、今回はそんなに嫌味じゃなくてあくまで必然的な舞台装置としてでてくるのが好きだった。私もよく夜寝れなくて一人で妻が寝ている間にボロくてうるさいBMWを走らせてレーズン臭いアメリカンスピリットを吸う、なんていうかこういうのわかるな。人と違う時間、モノを消費することでしか、自分の存在が認められないときがある。